サンティアゴ・デ・コンポステーラ。巡礼のひとり旅inスペイン(5)
2018年4月、スペインのカミーノ・デ・サンティアゴを112km手前からただただ歩いたひとり旅、5回目。
こんにちは、未季です。
変わらない日常を暮らしていると、朝ベッドで「さあ今日を一日楽しむぞ」なんて思って起きることをつい忘れてしまう。
その日が一日中雨だったりすればなおさらだ。
仕事ならば気合いも入るだろうか。けれど予定がないのならもう家の中をズルズルぐだぐだ、さながら落ち葉の下のケムシのようにファブリックの合間を這って過ごすのがデフォルトだろう。
下手したら家具の角にぶつかっては文句でも言いそうだから、もしかしたらケムシに失礼かもしれない。
ジメジメした気持ちでふてくされる。
雨の日はそれくらいおもしろくない。
けれどそんな嫌な気持ちが不思議と顔を出さないのが、長距離ウォーキングの素晴らしさの一つだ(幸福ホルモンセロトニンとウォーキングの関係)。
雨の日こそ歩く。
なんどもいうよ。
僕は確かに雨を愛せるよ。
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とはいえ、雨の日は続き、悲しみの一泊を体験した後はさすがに体が堪えていた。
逃げるように宿を出て、とにかく歩き出せば気分も変わる、早く歩こうと巡礼路に戻った時の気持ちはもはや依存症めいていたのかもしれない。
そんな時に出会えたのが白い馬だった。
雨雲の裂け目に青空が現れ始めてほっと一息したところに唐突に現れたのだ、音もなく。
巡礼路は2mほど谷のように下がっていて、白馬は見上げる位置に一頭で優雅に佇んでいた。
本当に驚いたし、聖なるものなんじゃないかと心に感じた。
誰もいない山の中で馬と一人。
よく見たらちゃんと生きた普通の馬だったけれどね。体と心に積もった疲れがすーっと抜けていく感覚を味わえました。
本当に美しかった。
その後出会う景色は一味違うように見えた。
私は確信を持って経験したことがないけれどその感覚はゾーンだったんじゃないかと思う。
普通の人にだってふと起こる、巡礼の道だからこその奇跡なのかもしれない。
この時には普段の複雑にしてしまいがちな思考の癖がだいぶとほぐされ、ほどかれていたのが感じられた。