サンティアゴ・デ・コンポステーラ。巡礼のひとり旅inスペイン(1)
2018年4月、スペインのカミーノ・デ・サンティアゴを112km手前からただただ歩いたひとり旅、1回目。
こんにちは、未季です。
一人旅が始まる、家を出てからの数時間はなんとも特別な気分。
普段大事に思っている家族も仕事も日々の楽しみも、いつもの笑い顔も姿勢でさえも歩くたびにどんどん剥がれ落ちて小さな我が家に仕舞って置いておく。
なんの名札も持たない自分は普段想像しているよりも少し違っていて、いつもより無責任で、いつもよりわがままで、いつもよりプリティであるような気がする。
だってスキップしちゃうし。
そして、浮浪雲みたいな気分で空港に向かう訳だ。あちきはさ、ってなもんよ。
性別とか年齢とか知識レベルとかそういったものの「こうでなきゃ」感からさよならさせていただくよ、と肩で風を切りながら今回も空港に向かった。
選りすぐりのブツを詰め込んでもバックパックは8kg。
フィンエアーでセントレアから出発。フィンランド・ヴァンター空港で乗り継いでスペイン・マドリードバラハス空港に着いたのは20:30だった。
抜けるような青空のヴァンター空港。
10万ちょっとで往復のチケットを買えてラッキーと思っていたけれどよく見たらヴァンター空港のトランジットが1時間45分しかなかった。
スペイン語もフィンランド語もまったく分からず、中学英語はテストで7点のわたくし。
幸い遅れなく到着してくれたので大丈夫だったけれど、搭乗口に着いた5分後には搭乗アナウンスでした。危険です。
もう少し余裕を持てたらムーミンを堪能できるよ。本当にたくさんいるから、ムーミン。
20:30ではまだ明るいマドリード。
旅行中に荷物を狙われる危険性が高いのは空港・主要駅なので、初スペインの私は空港から巡礼路のスタート地点であるサリアまでの道中をかなり時間をかけて計画していた。
マドリードからサリアまではバスで行くことにしたけれど直通のバスはなく、ルゴという街で乗り換えをしなければいけない。しかも時間は夜明けごろ。
そこに高いハードルを感じ、せめてもとそれ以外の乗り換えを最小限にするルートを探した。
幸い第四ターミナルまであるビッグ空港の降り立った目の前からルゴまでの直通バスを見つけた私。やってやったぜ。バスは23:45発。
空港にあるカフェでコーヒーでも飲んで待てば危なくないだろうと自宅からネット予約し万事OKと到着したのだった。
一人、ドキドキを隠しながらいかにも旅人然とまっすぐ前を向いて歩いていたのだけど、わかるだろうか…見渡さないと全体を把握できないよね。
ナメられてはいけないとどうしてもキョロキョロできない私はまっすぐ前を見続けながら歩き、選択する余地なく目に入った大きなカフェに入るしかなかった。そこには大きなテレビが置いてありサッカーの試合が放送されている。
とりあえずトランジットの短さと長いフライトで空腹に耐えていた私は、一番安いサンドウィッチを掴みコーヒーを注文して席についた。
ふわふわと落ち着かない気持ちのまま想像よりも小さなコーヒーカップを見つめ、wifiの繋がらないスマホを見つめ、空港内を見つめ、なにみとるんじゃわれーとふっかけられるかもしれないと目を落とした。脇目を振れずに入ったばかりに、最安で5€もしたコンビニみたいなサンドウィッチはレタスが腐っていて不味いを通り越している。食べられない。
そんなこんなで緊張している上にあっという間に終わったお食事時間に私は少し心が折れ、気がついたらカフェを出てしまっていた。
まだバスの出発まで2時間ほどある。
うろうろ歩くのもすぐに限界に達したのでカフェの前の空港備え付けの椅子に腰を下ろした。モニターのサッカーに盛り上がるスペイン人たちは雄叫びを上げている。
もはや気持ちの疲れた私の目に映る人々はすべて敵だ。私のなけなしの財産を狙っているのではないか…これを失ったらどうすればいいのか…8kgバックパックを必死に抱え、被害妄想と闘いながら残りの2時間をそこで耐えたのだった。
振り返ると本当におかしすぎて今でも笑えてくる。
小心者の一人旅とは得てしてこういったように始まっていくのかもしれない。
無事乗ったバスの中で目の奥がかぁーっと熱くなりながら、乗り切った自分に少し拍手も送りたい気持ちになった。
しかしその後、一生懸命探したルゴまでの直通バスはなぜかマドリード市外のバスターミナルで一度停まり、乗り換えを迫られたのだ。
運転手は英語が分からず、私はスペイン語が分からない。
その時はもう「売られる」と思ったね。
スマホの翻訳アプリでなんとかイレギュラーを理解できたのでもう二度とスマホ様を踏んづけて眠れません。
最後まで拙いやりとりに嫌な顔をせず付き合ってくれた運転手の人たち。
オロオロした妙齢のアジア人に皆さんも困っただろうなぁ。
巡礼路を歩いている記憶の次に思い出すのはこのスタートまでの道中。
楽しいハプニングはどんな旅にもあってワクワクする。
ルゴの券売所。
8時だけれど、この人気の無さよ…。
スタートのサリアに着いたのは9時前。
巡礼路に出るまで迷いに迷い、不安と元気の顔。
それでも歩き出した途端、今までの不安がすっと消えていくのを感じた。
そしていきなりこんな景色ですよ。
山間の飾り気のないボカケージョとカフェコンレチェが劇的に美味しくて、そう見えない。
大洪水の道は10カ所見た辺りから数えられなくなる。
ぼろぼろであっても久々の青空が嬉しくて。
この黄色のおかげで迷う心配は無いよ。
1日目は20km。
夜行バス泊でがんばった。
ご褒美でした。
リアル7色のレインボー。
ではでは。